学生に薦める本 2021年版

藤本 直生

『フジモト先生のビューティフル★アメリカ~Some Stories in Missouri~』

藤本直生 銀河書房 1995年

 この本は今から約20年以上前、私が長野県の中学校に勤めていた時に教え子のために書いた本です。本校の派遣留学先である University of Central Missouri は、アメリカの中西部ミズーリ州にありますが、そこは長野県と姉妹州でもあります。そのような関係で、私は1992年の夏に派遣団の一員として3週間ほど、ミズーリ州でホームステイする機会に恵まれました。本書は、私にとって初めて海外で体験した楽しいことや大変だったことを赤裸々に書きました。これからアメリカへの派遣留学を考えている人にお薦めの1冊です。
[OPAC]

『The Life Stories of Peter and Margaret Adamson』

Kiyotaka Sato Research Centre for the History of Religious and Cultural Diversity (RCHRCD) 明治大学 2020年
 この本は、イギリスのレスターという人口30万人の地方都市に住む、ある老夫婦の人生について書いたものです。なんと、その夫婦は私の夫の両親です。著者は佐藤清隆さんとおっしゃる明治大学で社会学を研究する教授です。佐藤さんは、2001年に研究のために渡英してレスターで1年間過ごしましたが、当初インドや東欧、中南米からの移民が多く住むレスターの人種の多様性に驚いたそうです。そこで、佐藤先生は移民の人々にインタビューをして、その方々の人生をまとめた本のシリーズを出版しました。全部で12冊になるシリーズですが、その最後の12冊目に当たるのが今回紹介する本です。
 実は、私の義父母は移民ではありませんが、佐藤先生はインタビューをした移民の方に次のように言われたそうです。「あなたは長年に渡って、移民の私たちにインタビューをしていますが、イギリス人がどのように移民を受け入れて、共存しているかということについても書いた方がいいのではありませんか。」そこで、シリーズの最後にイギリス人にインタビューすることを思い立ったそうです。
 すべて英語で書かれていますが、写真もたくさん入っていますから読みやすいかと思います。多文化社会における、人々の実生活について知ることが出来ますよ。
[OPAC]

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー:The Real British Secondary School Days』

ブレイディみかこ 新潮社 2019年
 著者のブレイディみかこさんは、福岡出身の日本人ですがイギリスでアイルランド人の男性と結婚し、一児の母となりました。この本のサブタイトルは、The Real British Secondary School Days(リアルなイギリスの中学校での日々)とある通り、ブレイディさんのお子さんが通う中学校での生活を描いたものです。
 イギリスと聞いて、「紳士の国」というイメージが思い浮かべる人も多いかと思いますが、実際にイギリスで暮らしてみると、決してそのようなイメージばかりではないことに気付くでしょう。私は、1998年から3年半イギリスに留学し、イギリス人の同級生と結婚したため年に1度は渡英していますので、ブレイディさんの本を読んで、きれいごとではすまされないイギリスでの人種問題に、真正面から向き合っていることに感心しました。
 「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」というタイトルは、日本人の母と白人の父との間に生まれたブレイディさんの息子が、ノートに書いた落書きをもとにしたそうです。世界中から移民を受け入れているイギリスでは、中学校の生徒たちの人種も多種多様で毎日さまざまな問題に直面しますが、子供たちが他人を思いやりながら、たくましく成長していく姿に明るい未来を感じることができます。
[OPAC]

『Animal Farm -A Fairy Story』

George Orwell Pearson Education 2018年
 この本は、私が皆さんと同じくらいの年頃の短大2年生の時、卒論の題材としてゼミの先生に薦められて選びました。イギリス人作家のジョージ・オーウェルは、この本の副題に A Fairy Story(お伽話)と付けています。確かにお伽話として読むこともできますが、全体主義国家のソビエト連邦を痛烈に批判した著書として知られています。
 話はイギリスの農場が舞台となっています。ある日、動物たちは人間の農場主を追い出して、理想の農場を作ることにしました。しかし、その道のりは長く険しいものでした。そして、最終的に豚が主導権を握って農場を支配するようになります。当初掲げた、All animals are equal(すべての動物は平等である)という理念には、いつの間にか but some animals are more equal than others(しかし、ある動物は他の動物よりも平等である)という部分が付け足されていました。
 豚のナポレオンはスターリンがモデルだそうです。とても心が痛むのは、理想の農場を作るべく懸命に働いた馬のボクサーが亡くなるシーンです。この世界には、ユートピアはないのだということを実感しました。このような悲劇をなくすにはどうしたらいいのでしょうか。きっと、私たち一人ひとりが自分の頭で考えて、政治に参加することが大事なのだと思います。
[OPAC]

『John Lennon』

Alex Raynham Oxford University Press 2014年
 ビートルズは、1960年代に活躍したイギリス出身のロックバンドですが、私にとって4人のメンバーの中で最もなじみがあるのがジョン・レノンです。たぶん、奥さんのオノヨーコが日本人だからかも知れません。
 ところで、今から20年以上前の1999年にイギリスのエセクス大学へ留学していた時、大学のあったコーチェスターという小さな町で、オノヨーコの展覧会が開かれました。行って見てみたいと思って、イギリス人の友達を誘ったところ、「僕はオノヨーコが好きじゃないんだ。イギリスでは、彼女はあまりよく思われていないんじゃないかな。」と断られてしまいました。びっくりしてその理由を聞くと、ジョン・レノンがオノヨーコと再婚したら、すっかりハウス・ハズバンドになってしまって、音楽活動をしなくなってしまったというのです。その時は半信半疑で話を聞きましたが、この本を読んでみて確かにその通りだったと知りました。
 ジョンの最初の妻はシンシアというイギリス人女性でしたが、当時は忙しすぎて妻や子供と過ごす時間が取れませんでした。そのような経験から、オノヨーコと再婚してショーンという息子が出来てから、家族との時間を大切にしたいということで、ジョンは家庭に入ったのだそうです。他にもいろいろなエピソードが満載の本ですから、ぜひ読んでみて下さい。
[OPAC]

『New Moon』

Stephenie Meyer Little, Brown and Company 2006年
 この本は、バンパイアのエドワードと人間の少女ベラとの恋物語である Twilight の第2弾です。私は本校に赴任する前、新潟県立大学のセルフアクセスセンターで学習指導員として働いていましたが、そこでこの本のシリーズ全巻が棚に置いてあるのを見て、いつかぜひとも読破したいと思っていました。
 第1巻の Twilight で二人は結ばれますが、なんと第2巻の New Moon では、エドワードがベラの前から忽然と姿を消してしまうのです。そのような時、彼女の心の支えとなったのが幼馴染のジェイコブでした。しかし、太古の時代からその地域に住むネイティブ・アメリカンの血を引く彼には、秘密がありました。それは、満月の夜に狼に変身するウェアウルフだったのです。人間の少女ベラとバンパイアのエドワードに加え、ウェアウルフのジェイコブとの三角関係はどうなるのでしょうか。
 続きが知りたい人は、ぜひ本を読んでみて下さい。500ページ以上のある分厚い本ですが、大きな字で書かれていますので、わりと読みやすいです。DVDもありますから、そちらを観てから読んでみいいかと思います。
[OPAC]

『New Moon』(DVD)

監督:クリス・ワイツ Kadokawa 2019年
 このDVDは、バンパイアのエドワードと人間の少女ベラとの恋物語である Twilight の第2弾です。DVDを観た人は、ぜひ英語版の本にも挑戦してみて下さい。分厚いティーンエイジャー向けの本ではありますが、内容が分かっていると結構スムーズに読めますよ。
[OPAC]

『モダンガール論‐女の子には出世の道が二つある』

斎藤美奈子 マガジンハウス 2000年
【推薦文】

 この本は、だいぶ前に長野県の諏訪東京理科大学にて非常勤講師として勤めていた頃、ジェンダーを専門に研究していた職場の同僚に薦められて読みました。
本書のサブタイトルは、「女の子には出世の道が二つある」、さらに帯には「社長になるか社長夫人になるか。」と書かれています。つまり、経済的に自立をして自ら出世の道を歩むのか、将来有望な男性を見つけて結婚するかの2択です。しかし、戦前の貧しい時代には、好きな方を自由に選べる選択肢はなかったといいます。100年前の1920年(大正9年)、女の子たちのリアルな進路は女工と女中だったそうです。確かにその通りだったかも知れません。というのも、亡くなった私の祖母は大正生まれですが、小学校を卒業してから女中として働いたと言っていました。
 近年では、日本の企業は海外の労働力の安い国に工場を移転していますので、女工として働く女の子はほとんどいなくなりました。女中についても、家電製品が充実していますので必要なくなりました。それでは、現代の日本は女の子たちが夢を持てるような社会になったでしょうか。私は、そうとも言えないと思います。著者の斎藤美奈子さんは、これからの日本社会について、男性も含めて皆が考えて行かなければならないと述べています。
[OPAC]

『Boy』

Roald Dahl; illustrated by Quentin Blake Puffin Books 2013年

『Charlie and the chocolate factory』

Roald Dahl; illustrated by Quentin Blake Kodansha International  2005年

『James and the Giant Peach』

Roald Dahl; illustrations by Quentin Blake Puffin 2016年

『Matilda』

Roald Dahl; illustrated by Quentin Blake Puffin Books 2007年

『The Twits』

Roald Dahl; illustrated by Quentin Blake Puffin Books 2016年

『The Witches』

Roald Dahl; illustrated by Quentin Blake Puffin Books 2015年
 著者の Roald Dahl はノルウェー人の両親を持ち、イギリスで生まれ育ちました。数多くの児童文学書を書いていますが、その中でも最も有名なのが皆さんもご存知の『チャーリーとチョコレート工場』です。
 彼の文学は風刺の効いたブラックユーモアが特徴的ですが、今回紹介するBoyは著者自身の体験に基づいた自叙伝です。生まれてから、学校を卒業するまでのさまざまなエピソードが満載の本です。とても印象に残ったエピソードは、著者がパブリック・スクールという、イギリスのお金持ちの子弟が通う全寮制の学校で勉強していた時のことです。当時は、厳しい主従関係が教員と生徒の間のみならず、先輩と後輩の間にもあり、著者はなんと朝先輩がトイレへ行く前に、長時間便座に座って温める係を仰せつかったそうです!ウォシュレットが普及した、今の日本では考えられないことですが・・・。
 他にも、本校の図書館に Roald Dahl の著書が何冊もありますので、こちらも合わせて読んでみて下さい。
“Charlie and the Chocolate Factory” “James and the Giant Peach” “Matilda” “The Twits” “The Witches”
[OPAC]
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『The Boy with the Cuckoo-Clock Heart』

Malzieu Mathias Vintage Contemporaries 2011年
 この本の著者であるMalzieu Mathiasは、フランス人のロック歌手というユニークな経歴の持ち主です。
 話の内容は、19世紀のイギリス、エジンバラで貧しい若い女性が私生児を生みます。出産後まもなく母親は亡くなり、生まれた男の子は心臓に欠陥があって体の弱い子でした。彼を救うために、マデレインという助産婦は彼の心臓に鳩時計を組み込みます。その男の子はジャックと名付けられて、マデレインの経営する孤児院で育ちます。マデレインはジャックに、彼の心臓は繊細で壊れやすいので、強い感情を伴う恋愛はくれぐれもしないようにとアドバイスします。しかし、ジャックは年頃になると、ミス・アカシアというスペイン人の歌手に恋をします。ジャックとミス・アカシアとの仲はどうなるのでしょうか。心臓に疾患を抱えたジャックの運命はいかに・・・! 続きは、ぜひ本書を読んで確かめてみて下さいね。
[OPAC]