学生に薦める本 2021年版

小林 満男

『データ・ドリブン・エコノミー』

森川博之 ダイヤモンド社 2019年

 本書の主張は、サブタイトル「デジタルがすべての企業・産業・社会を変革する」に集約されています。昨今は、メディアには、『デジタル・トランスフォーメーション』という言葉があふれていますが、具体的に世の中がどのように変化し、仕事や生活がどのように変わっていくのかは必ずしも明確に伝わってきません。著者は、情報・通信の最先端をけん引されてこられた著名な研究者です。本書では経済学者が書いたのではないかと思われるほど、幅広い議論が展開されています。
 私は、これからの時代を乗り切っていくには、将来、世の中がどのように変わっていくのかについて関心を持ちつつ、目の前の課題、勉強に熱心に取り組むというデュアル・ストラテジー(二面戦略)が有効ではないかと考えています。その近未来のイメージを考える際のヒントが満載されている本書を一読することをお薦めします。
 インターネットで、著者名“森川博之”を検索してみてください。その研究、活動の広さに目を見張ることと思います。Youtubeで著者名“森川博之”を入力してみてください。本書の内容に関連する講演(セミナー)が多数、アップされています。これらを見てから本書をじっくりと読むのもいいでしょう。ともかく、「経営」や「情報」の専門科目を勉強する際に、あるいは本格的に就職活動を行う前に、じっくりと本書を読むことをお薦めします。
[OPAC]

『ビッグデータがもたらす新しい経済 データ資本主義』

ビクター・マイヤー=ショーンベルガー+トーマス・ランジ (訳)斎藤栄一郎 NTT出版 2018年(訳2019年)
 これからの資本主義がどのように展開していくかについて全10章で説明した著書です。マクロ経済学&ミクロ経済学を受講した学生に本書をお薦めします。第1章のタイトルは「資本主義の再起動」、サブタイトルが「貨幣からデータへ、変化は社会のすべてへ」となっているとおり、本書はこれからの社会では貨幣の役割が相対的に低下し、データを“燃料”とする市場が再起動すると主張しています。かなり刺激的な内容がこのようなトーンで第10章まで続きます。第10章の最後のところで、「世の中には、ディストピア(暗黒の世界)的な予想、つまりデータ時代には冷酷であり、人間対技術という戦いの構図だとする見方があるのだが、こうした予想とは裏腹に、豊かなデータを通じて我々の未来ははるかに人との結びつきが進み、人間らしさが深まっていくだろう。」と結んでいるところには大いに共感します。
 2019年6月1日日経新聞“この一冊”の書評欄に掲載された慶応大学 藤田康範先生の推薦文を紹介します。
『本書は複雑な現状を誠実に描写し、我々に未来への希望を与えてくれる。人工知能を万能視する人や敵視する人、給与以外に生きがいを感じる人や21世紀のゴールドラッシュを実感したい人、等々。様々な人に読んでほしい一冊だ』
[OPAC]

『1日1話、読めば熱くなる 365人の仕事の教科書』

藤尾秀昭・監修 致知出版社 2020年
 この本の書評は、各雑誌、新聞にたくさん掲載されています。全国書店で売上げが続々第1位とか。とにかく人気のある本です。表紙をめくると、次のような文章が現れてきます。

『人生で真剣勝負した人の言葉は、詩人の言葉のように光る』


その次のページからは、1月から12月まで1日1話の目次(エキス)が見開きで並んでいます。そして、いよいよ本文に移っていきます。本書には365名、登場します。この本を手にしたら、本文は読まずに、まずは索引(p411~p415)をご覧ください。皆さんはこの中でよく知っている人、かろうじて名前を聞いたことのある人は何人いるでしょうか。あまりなじみの人がいなくても不安になる必要はありません。これから本書を機会にして、“知り合い“になればいいのです。この本は、登場する人たちとの出会いの場であり、出会いの門(ゲート)でもあります。つまり、1日1話を読んで感動したら、その人の著書を読んでみることをおすすめします。
 推薦文を書いている今日は、2月15日。この日のページを開くと、プレバトでおなじみの夏井いつき先生の「ものの見方を百八十度変える俳句の力」という話が掲載されています。例えば、「引きこもっていた人が俳句に出合って外に出歩けるようになったとか、視覚に障害を得て落ち込んでいた人が元気になったとか、大切な家族を亡くされた人が俳句仲間に支えられて立ち直ることができたとか、そういう例は枚挙に遑がありません。」というような具合です。
 まずは1日1話、読んでみてください。ちなみに、2月29日のページはありません。4年に1回の登場となりますが、このページに、自分らしい、自分の仕事にかける思いを書き込んでみてはいかがでしょうか。
[OPAC]