学生に薦める本 2021年版

吉澤 文寿

『「日韓」のモヤモヤと大学生のわたし』

加藤圭木〔監修〕, 一橋大学社会学部加藤圭木ゼミナール〔編〕 大月書店 2021年
 新型コロナウイルス感染症が拡散する前の2018年には、日本と韓国の間に約1000万人が往来しました。日本の若い世代は、幼少時代からすでに韓国の芸能人が活躍し、料理からファッションまで、さまざまな「韓国文化」に慣れ親しんでいます。その一方で、ネットで流れてくる情報に、家族や友人の言葉に、なんとなく「もやもや」する経験を持つ人も少なくありません。本書は日本の大学生と、韓国の留学生がその「もやもや」に向き合っていく本です。同じような経験をした人であればなおのこと、韓国・朝鮮について関心を持ち始めたばかりの人でも、読んでみると「あるある」と感じることがあるのでしょう。
 この本に登場する学生たちはそれぞれが感じる「もやもや」をお互いに率直に話し合いながら、その本質に向き合っていきます。果たしてその正体は突き止められたのでしょうか。学生たちの思索で注目されるのは、「もやもや」が決して自分たちの外部からもたらされる「偏見」や「無知」ばかりでなく、自分たち自身の問題であるというところにたどり着くことです。学生たちはそれぞれの学びを深めていきますが、「若者の交流で、日韓対立は解消するのか」、「『韓国が好き』ならば、それでいいのか」と自問するのです。
 私はこの本を読みながら、日本の歴史教育で韓国・朝鮮のことがきちんと教えられていないという状況を考えざるを得ませんでした。私が学生だった頃から、このような学びをしていれば、という反省もあります。教育現場に携わる者として、大学教育を改善するために、まだまだやるべきことは多いと感じさせる一冊です。
[OPAC]

『スマホ脳』

アンデシュ・ハンセン〔著〕, 久山葉子〔訳〕 新潮社 2020年
 学生の皆さんがふだんから慣れ親しんでいるものとしては、スマートフォンも入るのではないでしょうか。本学学生のほとんどがスマホを所有しています。スマホ使用と同時にSNSも知っていて、家族や友人などとの連絡はLineで、という人も多いです。ところで、人類の歴史を1万個の点に例えると、「スマホ、フェイスブック、インターネットがあって当たり前の世界しか経験しない時代」は、わずか点1個分です。精神科医の著者は、そのようなデジタルな現代社会に人間の脳が適応できないために、睡眠障害、ストレス増加などを引き起こし、とくに心の健康を害する結果がもたらされていると警告します。
 とくに、学習面でいえば、集中力の低下は深刻です。学生の皆さんはスマホを見ながら授業を聞いていませんか?スマホをいじりながら受けた授業の成績はいかがでしたか?著者は「最新のドラッグ」であるスマホへの対抗策として、体を動かすことを勧めています。適度に運動することも大事ですね。そして、授業時間を含む、学習中の「ながらスマホ」を撲滅(!)すれば、皆さんの心と身体の調子も劇的に改善するでしょう。
 持っていて当たり前のスマホですが、その「当たり前」の本質を理解すれば、スマホに依存しがちな自分の生活を客観的に眺めることができるでしょう。私もスマホやSNSを使うようになって気をつけなければならないと反省するところもあります。「手は突き出た大脳」と言われます。ふだん何を触っているかということも考えてみましょう。皆さんの生活習慣を見直すための一冊としてお薦めします。
[OPAC]