学生に薦める本 2021年版

宇田 隆幸

『Factfulness : 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』

ハンス・ロスリング, オーラ・ロスリング, アンナ・ロスリング・ロンランド著; 上杉周作, 関美和訳 日経BP社 2019年
2019年に出版されたものの中で日本の大学図書館に一番所蔵されている図書です。世界で100万部を売り上げるベストセラーでもあるので、目にしたことがある方も多いかと思います。

今あなたが正しいと思っている情報は、本当に正しいですか?
それを問う13の質問から始まります。
たとえば、
Q.現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を終了するでしょう?
A.20%、B.40%、C.60%
答えは、Cです。
皆さんの思っている通りでしたか?
世界は分断されているという思い込み、世界はどんどん悪くなっているという思い込み。
たとえばそういうことを好む人間の本能で物事を判断するのではなく、データに基づき正しく世界を知ろうというのが、このファクトフルネスの伝えたいことです。
ドラマティックでなければニュースにならないし、データも切り取り方で印象が変わる。
この本の副題は、「10の思い込みを乗り越え、データをもとに世界を正しく見る習慣」
皆さんも社会に出る前にぜひデータに基づく理解や判断の習慣をつけてほしいと思い、推薦します。
ファクトフルネスってなんだろう?
自分はどういう思い込みをしていたのだろう?
この本を読むことで気付いてもらえたらと思います。
[OPAC]

『星の子』

今村夏子 朝日新聞出版 2019年

『星の子』(DVD)

今村夏子(原作), 大森立嗣 (監督) Happinet 2021年
2020年に芦田愛菜さん主演で映画化された作品の原作です。
映画の完成披露で、「信じるという事」について芦田愛菜さんがスピーチされたと報じられていました。

主人公は中学生の女の子ちひろ。
優しい両親に大切に育てられていますが、その両親は少しばかり変わり者と思われています。
ちひろが幼いとき病気になり、両親は宗教に頼るようになります。ちひろが病から解放されたのもその宗教のおかげと思い、益々深く信じるようになりました。
宗教のある行為、宗教で取り上げられる水の存在、宗教者の集まり。
ちひろも大好きな両親に連れられて宗教行事に参加もするし、水にまつわる行為も行います。

子供であるちひろにも社会とのつながりがだんだん増えていく中、
自分と両親
自分と宗教に懐疑的な両親の兄弟
自分と同じ宗教の集まりで出会う子供たち
自分と中学校の友達
自分とちょっぴりあこがれた先生

それぞれの中で、どう信じるという事を自分を俯瞰することを学んでいくのでしょう。
物語のラストに解答は有りません。
「水」というシンボルを基に繰り広げられる宗教と、それを信じる人と信じない人と
その中にいる人と外から見ている人と。
多くの人とのかかわりの中、自分にとって信じるコト・モノ・ヒトとの付き合い方や距離感について考えさせられる作品です。
宗教は悪いものではありません、否定もしません。ですが家族や社会と引き離したりあなたに何かを強要したりするようであれば、それは宗教ではありません、カルトです。あくまで社会の中で生活することは捨てないでください。

併せて、DVDも推薦します。
(参考)単行本出版時、第39回野間文芸新人賞受賞作[3]。第157回芥川賞および本屋大賞2018候補作
[OPAC]
[OPAC]