学生に薦める本 2016年版

熊谷 卓

『べつの言葉で』

ジュンパ ラヒリ(Jhumpa Lahiri)(著), 中嶋 浩郎 (翻訳) 新潮社 2015.9
 著者は1967年、英国生まれ。もっとも、両親はカルカッタ出身であるため、ベンガル語が母語である。幼少時に渡米し、その後、大学・大学院を経て、英語による執筆活動に入った。
 本書は著者にとっては第3言語であるイタリア語で書いた随筆集である。
 普通(でもないかもしれないが)なら、より多数の話者・読者の言語で(小説にせよ・随筆にせよ)書くという方向に進んだ方が、商業的な成功の目論見という見地からはより合理的に思えるが、著者は今回、その逆を選択する。その理由は本書で確かめて欲しい。
 本書を読むと言語(この場合、イタリア語)の習得の難しさや喜びが伝わってくる。とてもおもしろいです。表紙も素敵です。
[OPAC]

『村上さんのところ』

村上春樹(著) 新潮社 2015.7
 仕事柄、自分より圧倒的に年齢の若い人たちと接することが多い(当たり前だけど)。そうした交流のなかで、目から鱗が(音を立てて)落ちることも多々ある。それは、自己の考え方が硬直化していることをあらためて認識する瞬間でもある。
 なお、本書は、著者が、期間限定のウェブサイト「村上さんのところ」上で行った相談問答をまとめ、書籍にしたものである。読み進んでいくと、著者の回答や相談者の質問の両者について、こういう見方もあるよなと素直に感心します。寝る前に少しずつ読めば、しばらくの間、安眠できます。忙しくてどうしようもないとき、読み返しております。
 フジモトマサル氏のイラストもかわいらしい。
[OPAC]