学生に薦める本 2016年版

小片 章子(情報センター)

「ヤマザキマリの偏愛ルネサンス美術論」

ヤマザキ マリ (著) 集英社新書 2015.12
 漫画『テルマエ・ロマエ』の作者ヤマザキマリの著作である。ヤマザキ氏がイタリアの国立美術学校で美術史と油絵を学んだ美術の専門家であることは全く知らなかった。
 ラファエロ、ダ・ヴィンチ、ミケランジェロなどの大御所の他、ウッチェロ、マンテーニャ、ダ・メッシーナなど、あまり語られない芸術家の変人エピソードを「好色坊主」「筋肉フェチ」「人嫌い」など面白キャラクターとして書いているが、内容は、正統で高度な美術論である。芸術家1人1人が従来スタイルを改革した優れたポイントを明確にしており、変人でなければ新しい美術のスタイルは創れない事がわかる。
 「変人」と呼ばれることは名誉なことである。
[OPAC]

「本音で生きる 一秒も後悔しない強い生き方」

堀江 貴文 (著) SB新書 2015.12
 堀江貴文は、プロ野球参入、ニッポン放送株買収などで注目を集めた時代の寵児であるが、2006年に証券取引法違反容疑で逮捕され、1年9か月間刑務所に服役した。年長者への気配りのない振る舞いで権力者の反感を買った「出る杭は打たれる」の見本のような人物である。
 本書では、各章を以下のようにまとめている。
 「できない理由を探していいことあるのか?」、「やりたいことがあるのなら、極端でいい」、「小利口が一番よくない」、「やりたいことは“今”やれ!」、「必要なのはノリとやる気だ」
 簡単に見えるが実は難しいことばかりだ。
 「君は偽悪者だね」と取り調べの検事にいわれたそうだが、「偽悪者」というより空気を読みたくない「変人」であると思う。ルネサンスを生み出した変人芸術家たちにも共通するが、変人たちが時代をbreakthroughしてきたことは間違いない。
 変人をオタク(=スペシャリスト/エキスパート)と置き換えてもよいが、ふつうの人の発想では、せいぜい現状維持どまり。次のステージへの道は、実は、オタクたちが切り開いているのである。オタクは、「達人」「職人」「技術者」と呼ばれる立派な職業人になり得る。
 学生の皆さんは、コミュニケーション技術の取得を重要視し、コミュニケーションがうまく取れないと就職できないのではないかと悩んだりすることがあると思うが、オタクであれば、道は開ける。知識と技術があればこわくない。
 うまくいかない事があった時にこの本を開くとヒントが見つかるかも知れない。
[OPAC]