学生に薦める本 2016年版

澤口 晋一

『日本奥地紀行』

イサベラ・バード著 ; 高梨健吉訳 平凡社 2000.2
 イザベラ・バード.1831年生.1904年(明治37年)没.19世紀の大英帝国(イギリス)の旅行家・探検家・紀行作家.『日本奥地紀行』は,明治維新からまだ間もない1878年(明治11年)、46歳の時に日本を訪れ,6月から9月までの3ヶ月かけて日光~会津,新潟,山形,秋田,青森そして北海道へと一人の日本人の従者(伊藤鶴吉)とともに旅をした際の記録.この後,バードは50年にもわたって来日しては,日本各地を訪ねあるくことになるのだが,この奥地紀行は日本に関する何の知識もない状況で初めて訪れた際の見聞をもとに書かれたものである.日本のことを全く知らない外国人から見た日本のあるいは民衆の姿が生き生きと何の飾り気もなく描かれており,いろいろな意味できわめて興味深い.そこから私たち自身がすでに知らない日本が浮かび上がってくる.
とはいえ,この本だけを読んでも,今の我々にはピンとこないところも実は多いのである.
[OPAC]

『イザベラ・バードの『日本奥地紀行』を読む』

宮本常一 平凡社 2002.12
 そこで,民俗学者としても著名な宮本常一による『日本奥地紀行を読む』が登場する.この本は,『日本奥地紀行』を民俗学者としての宮本常一の視点で評論・解説するものである.まずはバードのオリジナルの文章を引用し,それに解説を加えるという形で進んでいく.ここでの宮本の解説がまたひじょうに的確で面白く,これを読むことでバードの言いたかっったこと,あるいは描いていること,さらに言えば,違和感が解きほごされて,よくわかるようになる.そして,その当時の日本の民衆の姿,風俗を逆に我々が知ることになるのだ.
宮本の観察眼力はやはりすごいとしか言いようがない.
[OPAC]

『ジャーニー・ボーイ』

高橋克彦 朝日新聞出版 2013
 とはいえ,本学の学生たちにとっては,『日本奥地紀行』と言われても,何等の興味も関心も湧かないであろうことは容易に想像がつく.そこで,この1冊.推理小説の好きな人であれば,これから読んでみることをお勧めします.高橋克彦は,盛岡に生まれ育った推理・歴史小説作家で,みちのくを題材とした作品も多く手掛けている.『ジャーニー・ボーイ』は,前述したバードの従者として約3ヵ月旅を共にした伊藤鶴吉を主人公にして書かれたサスペンス?小説であるが,当然ながら宮本とは全く違う視点からバードとの旅を,その当時の日本の政治状況との兼ね合いから描き出している.東北発の作家の面目躍如.
 ということで,この『日本奥地紀行』オリジナルをいれて3部作を読めば,いわゆる一般に歴史と言ったときの支配階級を中心とした(教科書がその典型)記述から連想される日本とはまるで違う近代日本の歴史と姿が浮かび上がってくる.私なんかは,断然こちらの方が面白い.
[OPAC]