学生に薦める本 2017年版

山下 功

「追悼 松原正先生」

 初めての出会いは幼少の頃でした。松原先生は毎夏、家族で宮古の親戚の家に滞在していましたので、よく遊びに行きました。父や母は「松原先生」と呼ぶのですが、私にとっては釣り好きのおじさんであり、早稲田大学の教授であることを知ったのはだいぶ後のことです。
 大学受験に失敗して東京の予備校に通っていたときには「何年でも浪人してもよい」という言葉を頂き、私はこれを「自身の納得のいく大学へ行け」と解釈して励みにしていました。それから大学時代にかけて東京の邸に何度か訪問しましたが、そのときの話題はクラシック音楽とオーディオとパソコンであり、松原先生の研究領域であるシェイクスピアや評論についての議論をしたことは一度もありませんでした。
 最後に松原先生に会ったのは2008年8月、宮古の私の実家でした。新潟国際情報大学に就職して間もない頃で、名刺を渡すと「学者になったのか」と非常に喜んでいたのが印象に残っています。
 2016年6月8日、松原先生はこの世を去りました。12日の通夜に列席したときに思い巡らせたことをもとに、ここに書かせて頂きました。

『松原正全集 第一卷 「この世が舞臺 增補版」』

松原正 圭書房 2010.7

『松原正全集 第二卷 「文學と政治主義」』

松原正 圭書房 2012.12

『松原正全集 第三卷 「戰爭は無くならない」』

松原正 圭書房 2017.2
 正字正仮名(旧字体および旧仮名遣い)で表記されているので読みにくいと感じるかもしれませんが、文法は現代文であり、小品もたくさんありますので、興味のあるところからじっくり読むことをおすすめします。
[OPAC]
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『パソコンとハムレット 第一回 憂国が国を滅ぼす』

松原正 『日経ビズテック No.005』 2005.3

『パソコンとハムレット 第二回 政治と道徳とは別物である』

松原正 『日経ビズテック No.006』 2005.4

『パソコンとハムレット 第三回 虚學駄目なら實學も駄目』

松原正 『日経ビズテック No.007』 2005.6

『パソコンとハムレット 第四回 政治を超えるものがある』

松原正 『日経ビズテック No.008』 2005.8

『パソコンとハムレット 第五回 模倣に長けて獨創の才無し』

松原正 『日経ビズテック No.009』 2005.10

『パソコンとハムレット 第六回 高村光太郎といふ人』

松原正 『日経ビズテック No.010』 2005.12
 大学生の頃に松原先生とパソコン談義をしたとき、データベース「桐」で有名な管理工学研究所と共同で日本語IME「松茸」を正字正仮名に対応させる案件に関わっていると聞きました。第三回ではその後日談として、ジャストシステムの「ATOK」を使って正字正仮名で執筆していることが書かれています。
 現在、「松茸」は既に開発が終了しており、「ATOK」は文語変換モードを実装していますが正字正仮名には対応していません。そのような中で、パーソナルメディアの「超漢字」は多漢字対応のソフトウェアとして気を吐いています。
 なお、『日経ビズテック』が第10号をもって休刊となったことに伴い、MOT(技術経営)雑誌の中で異彩を放っていた「パソコンとハムレット」も残念ながら連載を終了しました。