学生に薦める本 2017年版

臼井 陽一郎

『ストーナー』

ジョン・ウィリアムズ 作品社 2014

『服従』

ミシェル・ウエルベック 河出書房新社 2015

『悲の器』

高橋和巳 河出書房新社 2016
この3冊、大学教員なる人種の生態について、少しばかり本質的なところに目を向けることができる。ただし、<優秀な>大学教員の生態である。<凡庸な>大学教員についての書物ではない。大学とはいかなる場であるのか、学術の知とは何を意味するのか。そんな高尚なことを考えてみるのも、大学にきた以上、それなりに価値のある経験になろう。けれども、その知を生みだし伝える役割を担うのは、生身の人間である。風邪も引くし、膝もぶつけるし、血もだらだらと流れる。スタバでいつもお疲れさまってポストイットに書かれたメモをもらうと舞い上がってしまうし、お腹が出てきたから夜の缶ビールは控えようって思ってもかならず誘惑に負けてしまう。コメントカードに描かれた絵は永久保存版にしてしまう。優秀な学術研究者であることは、ときに醜悪な人間執着者であることも意味する。参考までに、<凡庸な>大学教員の方が教育熱心であるし、講義やゼミも例外なくすばらしい。本学はそういう<凡庸な>大学教員ばかりなんだとおもう。上記三冊に描かれるような<優秀な>大学教員はひとりもいない(はず)。
[OPAC]
[OPAC]
[OPAC]