学生に薦める本 2017年版

藤本 直生

『ダーリンは外国人』

小栗 左多里 メディアファクトリー 2002.12-2004.3
 「外国人の彼と結婚したら、どうなるの?ルポ」という副題が付いていますが、その題名の通りの本です。
日本人女性の小栗左多里さんの彼は、ハンガリー人とイタリア人の親を持ちアメリカで教育を受けた男性(トニー ラズロさん)です。二人の共同生活の様子が小栗左多里さんの描くマンガによく表現されています。実は、私のダーリンも外国人(イギリス人)ですが、結婚生活をおくる中で似たような異文化体験をしています。あなたの将来の結婚相手も必ずしも日本人とは限りませんよ。
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『ママ、博士にならなくてもいいよ』

アグネス・チャン 朝日新聞社 1994
 書店でこの本を手に取ったのは今から20年以上前で、私は大学を卒業して長野県の中学校で英語教師をしていました。著者のアグネス・チャンは、結婚していて子供もいて歌手でもありますが、1989年から1992年まで3年間、アメリカのスタンフォード大学の教育学部・博士課程に留学しました。当時20代だった私は、30代半ばで家庭を持つアグネス・チャンが留学して、教育学の博士号を取得するに至ったというこの本を読んで、「私も将来、英語圏の国に留学して教育学の博士号が取得できたらいいなあ」という、漠然とした夢を持つようになりました。そして、30歳の時に教員を辞めてイギリス留学を決心しました。

 人生80年と言われますが、勉強は大学を卒業して社会人になってからが本番だと思います。社会人として培った知識と経験をもとに、海外の大学で修士号や博士号を取得して、キャリアアップにつながるように考えてみてはいかがでしょうか。
[OPAC]

『自信という最上のドレスの手に入れ方』

アリカ・アンギャル 幻冬舎 2014.7
 著者のエリカ・アンギャルさんは、ミス・ユニバース・ジャパン公式栄養コンサルタントとして、ファイナリストたちに8年間食事指導をされました。そのような中で、日本女性たちがその美しい容姿にもかかわらず、自信を持てずにいることを残念に思い、この本を書いたそうです。とかく日本では若い女性がもてはやされ、「カワイイ」ことがいいことのように思われていますが、ミス・ユニバースのファイナリストたちに「カワイイ」を卒業して、「エレガント」な女性を目指すようにアドバイスしたそうです。

 実は、私の夫(イギリス人)も女性についてエリカさんと似た考えを持っています。例えば、ヨーロッパには「ワインと女性は古い方がいい」ということわざがあります。結婚して15年になりますが、私は夫からよく “You are more beautiful than before.” (以前にも増してきれいだね。)といわれます。

 「カワイイ」を卒業して、大人の女性を目指す女子にお薦めの1冊です。
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『僕がワイナリーをつくった理由』

落 希一郎 ダイヤモンド社 2009.6
 大学から車で10分ほどの場所にカーブドッチというワイナリーがありますが、皆さんは行ったことがありますか? 著者の落希一郎さんはカーブドッチのオーナーです。とてもお洒落なワイナリーで、私はよくカフェでケーキとお茶をいただきながら、バラなど色とりどりの季節の花々を見て癒されています。この本を読むと、なぜこのような素敵なワイナリーが新潟に出来たのかがわかります。落さんは20代後半でドイツに留学し、西ドイツ国立ワイン学校を卒業して WEINBAUTECHNIKER というワイン醸造の国家資格を取得しました。

 落さんのビジネスのポリシーは、「大量生産・大量消費」ではなく、「少量生産・少量消費」だそうです。地域のみんなが幸せになれる方法を模索していたら、自然とこの方向に向かったそうです。ドイツで学んだもの作りの精神が新潟の活性化に寄与していることを知り、感銘を受けました。
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『お金の流れでわかる世界の歴史』

大村 大次郎 KADOKAWA 2015.12
 著者の大村大次郎さんは、元国税調査官ということで税金の専門家です。5,000年の世界の歴史を「お金」の流れでひも解いて行く、というのが本書のテーマとなっています。私たちは、学校で何年にも渡って世界史を勉強して来ましたが、大村さんは「本当に歴史を動かしているのは、政治や戦争ではない。お金、経済なのである」といっています。それは、お金を上手に集めて適切に分配することが出来る人が政治力を持ち、「戦争に勝つ者は、必ず経済の裏付けがある」ということです。世界史を “マネー視点” で見ることの斬新さに、目からウロコが落ちる思いでした。 国際政治や経済を勉強している本校の学生諸君に、ぜひ読んでいただきたい本です。
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『Catwings』

Ursula K.Le.Guin Orchard Books 2006
 この本は数年前、私が新潟県立大学のセルフアクセス・センターに勤めていた時に読みました。

背中に鳥のような翼の生えた子猫の兄弟、4匹が主人公の絵本です。子猫たちの両親は翼のない普通の猫なので、なぜこの子猫たちに翼があるのかなぞですが、子猫の絵がとってもかわいいので、むずかしい単語が使われている英語の本であるにもかかわらず、どんどん読めてしまいます。県立大の学生たちにも人気の本でした。子猫たちの冒険物語をドキドキしながら楽しんで下さい。

他にもシリーズで次の3冊が出ていますので、こちらも合わせて読んでみて下さい。
“Jane on Her Own” “Wonderful Alexander and the Catwings” “Catwings Return”
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『Matilda』

Roald Dahl Puffin books 2007
 作者の Roald Dahl はノルウェー人の両親を持ち、イギリスで生まれ育ちました。数多くの児童文学書を書いていますが、その中でも最も有名なのが皆さんもご存知の『チャーリーとチョコレート工場』です。彼の文学は風刺の効いたブラックユーモアが特徴的ですが、今回紹介するMatilda に関しても Roald Dahl 独特のユーモア満載です。読書好きのMatilda は中古車販売を生業とする父と母、兄の4人家族ですが、両親は息子の兄をえこひいきして、 Matilda をネグレクトとも取られる扱いをしていました。かわいそうなMatilda の運命はどうなるのでしょうか。それは、本を読んでみてのお楽しみ。

他にも、本校の図書館に Roald Dahl の著書が4冊ありますので、こちらも合わせて読んでみて下さい。
“Charlie and the Chocolate Factory” “James and the Giant Peach” “The Twins” “The Witches”
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『Marina』

Carlos Ruiz Zafon Phoenix 2014
 この本は3年ほど前、2013年の私の誕生日にイギリス人の夫からプレゼントされて読みました。

 著者の Carlos Ruiz Zafon はバルセロナ生まれのスペインの小説家ですが、この本の舞台もバルセロナです。皆さんと同じくらいの年代の学生たちをターゲットとしたヤング・アダルト向けの英語の小説で、オリジナルはスペイン語で書かれました。1980年5月のある日、15歳の少年 Oscarが バルセロナの全寮制の学校から、突然姿を消しました。7日間、彼は行方不明となりましたが、その間だれも彼の行方を知る人はいませんでした。OscarはMarina という少女に出会い、墓地で黒いドレスを着た女性を見かけて、彼女の後をつけることからさまざまな事件に巻き込まれることとなります。続きはせひ、この本を読んでみて下さいね。
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『When Marnie was there』

Jean G. Robinson HarperCollins Children's Books 2014
 この本は、約50年前にイギリスで出版されましたものですが、2015年にスタジオ・ジブリからアニメ映画としてリリースされました。アニメを観てからオリジナルの本を読むと、比較が出来ておもしろいですよ。例えば、アニメでは北海道が舞台となっていますが、オリジナルの本ではイギリスのノーフォークです。

 アンナは両親と子供の頃に死別し、ロンドンで子供のいない夫婦に引き取られて育てられていました。持病があったので、空気のきれいなノーフォークの Little Overtonという小さな町に住む親戚の家に預けられて、ひと夏を過ごしました。その間にマーニーという少女と出会い、友情を育みました。しかし、驚いたことに
マーニーは実際に存在する人ではありませんでした。はたして、マーニーの正体はいかに?!

 本書の興味深い点は、Postscript というあとがきを読むことです。これは、著者 Jean G. Robinson の娘である Deborah Sheppard が執筆しました。おそらくスタジオ・ジブリの米林宏昌監督ではないかと思いますが、日本人男性が日本語版の『思い出のマーニー』を携えて、Little Overton を訪れた時のことも書かれています。アニメ『思い出のマーニー』を観てからこの本を読むと、ぐっと親しみが沸きますよ。
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『思い出のマーニー』

ジョーン・G・ロビンソン [著] ; 高見浩訳 新潮社 2014.7

『思い出のマーニー』DVD

DVD:米林 宏昌(監督) スタジオ・ジブリ 2015
 この映画は2015年にスタジオ・ジブリからリリースされましたが、イギリスの児童文学 “When Marnie Was Where” (Robinson, 1967) がもとになっています。この本は世界各国で翻訳されて読まれていますが、日本語にも『思い出のマーニー』と訳されて読み継がれています。監督の米林宏昌さんは、日本語版を読んでこの映画を作りました。英語の原作と合わせて観ると、オリジナルとの比較が出来ておもしろいと思いますよ。
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