学生に薦める本 2017年版

熊谷 卓

『Revenge』

Yoko Ogawa;translated by Stephen Snyder Vintage Books 2014
 仕事の関係上、英語を読まなければなりませんが、それでも、日本語を読むようにというわけにはいきませんね。(長年)なんとかならないものかと考えて、ようやくたどり着いたのが、元々が日本語で書かれた「本」(小説でもエッセイでもOK)の翻訳ヴァージョンを読むという作業です。文化や社会的背景についての一定の既視感をふまえて読むことができるので、仮に不明確な単語や言い回しに直面しても、類推が効き、途中で投げ出すことなく読み切ることができます。日本語の原書を後に読むこともできます。一点付け加えると、日本語の原書についてはできれば後に読んでください。その方が面白いと思います。
 作家(著者)については、ここで紹介する必要もないでしょう。
 内容はとても面白いです。オススメします。
[OPAC]

『Blind willow,sleeping woman:twenty-four stories』

Haruki Murakami London : Vintage 2007
 オススメする理由は、先に述べた本と基本的に同じです。
 本書は、村上春樹の短編集の英訳です。短編なので、それぞれの作品を読み切ることは可能でしょう。
 もっとも、作品それぞれに描写、登場人物のセリフ、結末についてのおもしろさがあります。
 読んだなかでは、“Birthday Girl”はとくにオススメです。
[OPAC]

『夜と霧』

ヴィクトール・E・フランクル著;池田香代子訳 みすず書房 2002.11

『プロット・アゲンスト・アメリカ;もしもアメリカが…』

フィリップ・ロス著;柴田元幸訳 集英社 2014.8
 国連の幸福度調査によると、日本は「他者への寛容さ」などの数値が低く、去年よりも2つその順位を上げたものの51位にとどまり、G7=主要7か国では「幸福度」は最も低くなったということを知りました(NHKのニュースから)。
 「他者への寛容さ」を「多様性の承認または受容」と読み替えることもできると思いますが、上位の国々は、あきらかに「多様性」に富み、それをきちんと受容しているとなあと感じます。
 ここで、取り上げた2冊の本は、「他者への寛容さ」が極限まで低くなったら世界(社会、世の中)はどうなるかということについて書かれています。前者は著者の体験を下に書かれたもの、後者は小説として書かれたもの、という違いはありますが、寛容性のない、多様性を認めない人びとが、社会をどのような方向に持って行くか(持って行こうとするか)がたいへんよく分かります。
 学生のうちに絶対、読んでおいて欲しい2冊です。
[OPAC]
[OPAC]