学生に薦める本 2017年版

平山 征夫(学長)

『資本の世界史』

ウルリケ・ヘルマン著;猪俣和夫訳 太田出版 2015.10
―著者はドイツの気鋭の経済新聞記者。2008年のリーマンショック後も金融危機が終了しない現状、その背景に資本主義の成熟・劣化があるのではないかと言う「資本主義論」が盛んななかで、必読書と評価が高い。
 イングランドの片田舎で偶然生まれた資本主義、その後幾度もの危機に直面しながら乗り越え、今や我々の世界を規定しているようにすら見える。今回も資本主義は危機を乗り越え延命するのだろうか。資本の歴史からそれを洞察した好著。
[OPAC]

『グローバリゼーション・パラドクス』

ダニ・ロドリック著;柴山桂太・大川良文訳 白水社 2014.1
―著者はプリンストン高等研究所教授、専門は国際経済学、経済成長論、政治経済学。
 アジア通貨危機や過剰マネーが米住宅市場に雪崩こんで発生したサブプライム危機、リーマンショック、ギリシャ問題など欧州ソブリン危機など世界経済はここ20年危機に瀕している。本書はそうした現象をブレトンウッズ体制に始まる戦後経済史の流れから文責、処方箋を提示したもの。それは、民主主義を犠牲にするか、国家主権を捨てるか、グローバリゼーションに制約を加えるか、この3つの道の選択と言うユニークなものだ。
[OPAC]

『太平洋戦争とは何だったのか:1941年~45年の国家、社会、そして極東戦争』

クリストファー・ソーン著;市川洋一訳 草思社 1989.3
―著者は英国サセックス大学国際関係論教授、太平洋戦争(著者は極東戦争と呼ぶ)は何故起こったかを徹底した公平の観点から分析した名著、それまでの日本の侵略の起点と言われる満州事変はじめこれまでの歴史観を見直し、徹底した分析から表題のテーマを追求。
[OPAC]